不妊症とは
不妊症とは、妊娠を望むカップルが1年以上避妊せず通常の性交を行っても妊娠しない状態を指します。この場合、何らかの妊娠を妨げる原因がある可能性があります。一度ご来院いただき、原因を探りましょう。
不妊症の原因には、排卵因子、卵管因子、子宮因子、原因不明、男性因子があります。女性に原因がある場合(女性不妊)、男性に原因がある場合(男性不妊)、そして男女両方に原因がある場合もあります。原因の割合は男女でほぼ半々とされていますので、できるだけお二人でご来院ください。
一般不妊検査
- 排卵障害の有無を確認する(きちんと排卵しているかどうか)
- 精子の数が正常かどうかを確認する(男性因子の有無)
- 子宮・卵管などに問題がないかを確認する(子宮・卵管因子)
上記の3点に問題がなければ、自然妊娠が期待できます。
女性が受ける不妊症の検査
超音波検査
超音波検査は、子宮や卵巣の状態を観察する検査です。卵胞の数や発育状況をチェックし、「子宮筋腫」「子宮内膜症」「卵巣腫瘍」などの婦人科疾患の有無を確認します。基本的には経腟的に行いますが、必要に応じて経腹的または経肛門的に行うこともあります。
血液検査(女性ホルモン・感染症)
重要なホルモンや感染症(B型・C型肝炎、梅毒、HIVなど)の有無を調べます。また、クラミジア抗体、甲状腺ホルモン、AMHの数値を調べ、排卵障害の原因などを確認します。
ホルモン検査
卵巣予備能を判断するために重要な血液検査です。以下のホルモンが測定されます。
- エストラジオール(E2):卵胞ホルモン。子宮内膜を肥厚させます。エストロゲンの主成分であり、卵胞成熟の指標となります。
- FSH(卵胞刺激ホルモン): 卵巣で卵胞の発育を促します。高値の場合は卵巣機能低下を疑います。
- LH(黄体形成ホルモン): 卵巣での卵子成熟と排卵を促します。FSHよりも高値の場合、多嚢胞性卵巣症候群を疑います。
- プロゲステロン(P4): 黄体ホルモン。子宮内膜を分泌期に変化させ、着床の準備を整えます。
- AMH(抗ミュラー管ホルモン): 卵子の数や卵胞の数を評価する指標です。
- プロラクチン(PRL): 妊娠中や分娩後に多く分泌され、母乳を作る働きをします。高PRL血症は無排卵や無月経を引き起こす可能性があります。
- TSH(甲状腺刺激ホルモン): 甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの分泌を促します。異常高値は甲状腺機能低下症、異常低値は甲状腺機能亢進症を疑います。
- FT4(甲状腺ホルモン): 甲状腺ホルモンであるサイロキシンの量を測定し、甲状腺機能の診断に有用です。
- hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン): 妊娠中に産生されるホルモンで、妊娠の確認に用いられます。
卵管通気・通水法
精子や受精卵の通り道となる卵管の閉塞や狭窄、子宮の奇形や病変を調べる検査です。
子宮鏡検査
子宮内膜ポリープや子宮筋腫、子宮の内腔の癒着などを内視鏡で確認する検査です。
検査にかかる所要時間と費用
- 所要時間:5~10分程度
- 費用(自費の場合): 子宮鏡検査 13,000円(税込)
男性が受ける一般不妊検査
精液検査
精液量、精子濃度、運動率、総精子数を測定します。結果に基づき以下のように診断されます。
- 乏精子症:総精子数が3,900万個未満
- 精子無力症:精子運動率が42%未満、前進運動率が30%未満
- 無精子症:精液中に精子が見つからない
精液所見に影響を与える因子には、サウナや長風呂、タイトな下着、喫煙、アルコールの過剰摂取、ストレス、肥満などがあります。
費用
- 初診の方:初診料+精液検査で 5,000円(税込)
- 再診の方:再診料+精液検査で 2,900円(税込)
一般不妊治療
不妊の原因が特定できた場合、原因に対する治療を行います。一般不妊治療には「タイミング療法」と「人工授精」があります。
タイミング療法とは
妊娠に最適な日を医師が指導する方法です。自然な妊娠を期待でき、身体的・金銭的負担が少ないです。
タイミング療法の適応
自然妊娠を望めるカップルが適応となります。男性には精液検査、女性には卵管造影検査を推奨します。
妊娠率
タイミング療法における1周期あたりの妊娠率はおよそ5~6%です。累積妊娠率は6ヶ月でおよそ50%となります。4~6回行っても妊娠に至らない場合は、他の治療方法を検討します。
診察と通院
- 卵胞期の診察:排卵日前後に来院し、超音波検査で卵胞の大きさを計測します。
- 黄体期の診察:排卵促進から3~4日後に来院し、排卵を確認します。
1周期あたりの通院回数は2~4回で、1回あたりの診察所要時間は10分程度です。排卵日から2週間待っても月経がこない場合は、妊娠検査薬を使用し、陽性の場合は予約を取ってください。