体外受精とは
体外受精(IVF)は、採卵手術により排卵直前に体内から取り出した卵子を体外で精子と受精させる治療です。体外に取り出すことで卵子と精子をより確実に受精させるチャンスを得られます。培養液の中に採取した卵子と精子を混ぜ、精子が泳いで卵子に向かい受精が起きます。体外で受精が起きますが、人為的に卵子と精子を選んで受精させるのではなく、卵子と精子がお互いに選びあい受精するという点はより自然に近い形です。
2020年に日本で出生した児のうち、体外受精(を含む生殖補助医療)による出生は約14人に1人となっています。全世界で800万人を超えたともいわれ、世界初の成功例で生まれた女性を含めて初期の体外受精による出生児が多数成人となり、体外受精を必要とせず次世代の児を得ていることが報告されています。
生殖補助医療(ART:Assisted Reproductive Technology)とは
- 体外受精(IVF)
- 顕微授精法(ICSI)
- 胚移植(ET)
- ヒト卵子・胚の凍結保存
- 凍結胚移植
これらの技術は総称して生殖補助医療(ART)と呼ばれます。
ARTは以下の3つのステップに分けられます。
- 採卵:女性の体内で卵巣の中にある卵子を育て、外に取り出す過程。
- 培養:同じ日に精子を採取し、採卵で採れた卵子と受精させ、育てる過程。
- 移植:育てた胚を子宮の中に戻す過程。
ARTと一般不妊治療の違い
ARTは、タイミング法や人工授精と異なり、卵子と精子が出会い受精する場が女性の体内ではなく、体外になります。これにより、確実に受精させることができ、妊娠率を向上させることができます。
体外受精の主な流れ
- 採卵
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- 月経1~3日目に受診し、超音波検査、採血を行います。
- 刺激法を決定し、卵胞を育てます。
- 月経8~9日目に再受診し、超音波検査で卵胞の成長を確認します。
- 最終成熟を促す処置を行い、36~42時間後に排卵直前の卵子を採取します。
採卵術:超音波ガイド下経腟的卵胞穿刺術により、腟内から採卵用の針を進めて卵胞を穿刺し、卵胞内容液を吸引して卵子を回収します。
- 精液の採取
- 男性パートナーの精子を採取し、培養皿の中で卵子と混和させて受精させます。
- 受精と培養
- 一定濃度に調整した精子と卵子をシャーレで混和し、受精させます。受精卵は分割を進め、胚盤胞に到達させた後に移植します。
- 胚移植
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受精卵を子宮に戻し、着床を待ちます。移植から2週間後に妊娠判定を行い、妊娠が確認されれば成功となります。
ホルモン補充:胚移植を予定する場合、黄体ホルモン製剤やエストロゲン製剤を使用し、着床しやすくします。
体外受精を検討された方が良いとされる方
原則として体外受精は、これ以外の医療行為によっては妊娠成立の見込みがないと判断される場合に行われる治療です。具体的には、以下の場合が適応になります。
- 一般不妊治療(タイミング法、排卵誘発法、人工授精)を十分に行ったが妊娠できなかった場合。
- 男性因子による不妊(精子濃度が低い、精子運動性が不良など)。
- 両側卵管切除後、卵管の閉塞や癒着による機能障害がある場合。
- 抗精子抗体が陽性で自然妊娠や人工授精で妊娠できない場合。
- 妊娠を希望する女性の年齢が35歳以上
- 人工授精の回数が5回以上になっている
- 男性不妊がみられる(乏精子症、精子無力症、奇形精子症の造精機能障害、性機能障害 等)
- 卵管が狭窄あるいは閉塞している(卵管性不妊)
- (原因:クラミジア感染症、淋菌感染症、子宮内膜症、卵管水腫、ピックアップ障害 等)
- AMH(抗ミュラー管ホルモン)の数値が低いなど
日本産科婦人科学会の報告によると、2020年に日本では体外受精を用いた治療が82,883周期分行われています。そのうち、新鮮胚移植1回あたりの妊娠率は23.1%、生産率は16.7%となります。凍結胚移植が214,990周期分行われており、移植1回あたりの妊娠率は36%、移植1回あたりの生産率は25.5%と言われています。
保険適用について
2022年4月より、不妊治療に対して保険適用が開始されました。これにより、患者様の自己負担額が大きく軽減されました。保険適用範囲は1子を得るまでに通算6回まで(40歳以上43歳未満は3回まで)となっています。