- 2026年6月15日
教えて!岩佐院長:~【女性のデリケートなお悩み】「子宮脱」ってどんな状態?原因から予防・最新のケアまで専門医が解説~

こんにちは。枚方市香里園町にあるイワサクリニック院長の岩佐です。
普段、誰にも言えずに「これって病気なのかな…?」と一人で悩んでいる体のお悩みはありませんか?
今回は、40代以降の女性や出産の経験がある方に比較的多く見られる「子宮脱(しきゅうだつ)」について、Q&A形式で分かりやすく解説します。
Q1. 「子宮脱」とはどのような状態ですか?
A. 本来なら骨盤の中にあるはずの子宮が、下がってきて膣の外に飛び出してしまう状態のことです。

骨盤の底には、内臓をハンモックのように下から支えている「骨盤底筋(こつばんていきん)」という筋肉や靭帯があります。この筋肉が加齢や出産などの影響で緩んでしまうと、子宮が重みに耐えきれずに下へと引っ張られ、膣から外へと出てきてしまいます。
命に関わる重大な病気ではありませんが、歩くときに違和感があったり、下着に擦れて痛んだりするなど、日常生活の質(QOL)に大きく影響するデリケートな疾患です。
Q2. どんな症状が出たら受診すべきですか?
A. 「股の間に何かが挟まっている感覚(異物感)」や、尿に関するトラブルが出たらサインです。
子宮脱は、その進行度(ステージ)によって症状が変わります。
- 初期(ステージ1): 自覚症状はほとんどなく、検診などで見つかることが多いです。
- 中等度(ステージ2): 夕方や長く歩いたあとに「ピンポン玉のようなものが触れる」「下腹部が引っ張られるように重い」と感じるようになります。
- 高度・重度(ステージ3〜4): 子宮の大部分、あるいは全体が外に飛び出します。下着に擦れて出血したり、尿道が引っ張られて「尿が出にくい(押し戻さないと出ない)」「激しい尿漏れ」といった排尿障害が目立ってきます。
「何か触れるな」「いつもと違う違和感がある」と感じた段階(ステージ2以降)で、早めに婦人科や女性泌尿器科(ウロギネコロジー)を受診することをおすすめします。
Q3. 子宮脱になりやすい人の特徴はありますか?
A. 出産経験のある方、閉経を迎えられた方、日常的に「腹圧」がかかる方に多く見られます。
具体的には、以下のような方に起こりやすい傾向があります。
- 出産を経験された方: 特に難産だった方や、複数回の出産を経験された方は、骨盤底筋が大きく引き伸ばされてダメージを受けています。
- 閉経を迎えた方: 女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると、骨盤底筋や靭帯の組織がもろくなり、緩みやすくなります。
- お腹に力がかかる習慣がある方: 立ち仕事が多い、重い荷物を日常的に持つ、慢性の便秘でトイレのたびに強く「いきむ」、慢性の激しい咳がある、といった方は上から子宮を押し下げる力が日常的にかかっています。
Q4. 自宅でできる予防法や対策はありますか?
A. 骨盤底筋を鍛える「骨盤底筋体操」と、お腹に負担をかけない生活習慣が有効です。
これ以上の進行を防ぐため、また今後の予防のために、今日から以下の2つを意識してみましょう。
① 骨盤底筋体操(筋トレ)
仰向けに寝るか椅子に座り、「おしっこを途中で止めるようなイメージ」で、膣や肛門をキュッとすぼめて5〜10秒ほどお腹の中に引き上げます。その後、10秒リラックスします。これを1日10〜20回、気づいたときに行います。最低2〜3ヶ月続けると効果を実感しやすくなります。
② 日常生活での腹圧対策
- 便秘の解消: トイレでの長いいきみは厳禁です。水分や食物繊維を意識しましょう。
- 荷物の持ち方: 中腰で持たず、しっかり腰を落として体を引き寄せてから、足の力で持ち上げます。
- 咳の治療: 喘息や花粉症による咳は放置せず、適切に治療しましょう。
Q5. 最近よく聞く「骨盤底筋トレーニングマシン」って効果はあるの?
A. 効率よく正しい筋肉を鍛えられるため、初期の予防や改善には非常にメリットがあります。
当院でも導入している、座るだけで骨盤底筋を鍛えるマシン(電磁パルスやEMSなど)には、以下のようなメリットがあります。
- 「正しい力の入れ方」が分かる: 自力では意識しにくいインナーマッスルを的確に刺激するため、「どこを鍛えればいいか」が感覚で分かります。
- 圧倒的な運動量: 数十分座っているだけで、自力では不可能な回数の筋肉収縮を均一に促せるため、効率的です。
- 座るだけなので簡単: 運動が苦手な方や、高齢の方でも無理なく続けられます。
骨盤底筋トレーニングチェア(フェミゾンプラス)のページはこちら
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※ただし、すでに子宮が完全に外に出てしまっている重度の状態(ステージ3〜4)では、マシンや体操だけで元の位置に戻すのは難しく、ペッサリー(器具)による治療や手術が検討されます。まずはご自身の状態を医師に相談することが大切です。
Q6.メスを入れないペッサリー療法とは?
A.ペッサリー療法とは、子宮脱の治療において、手術をせずに行う「保存的治療(ほぞんてきちりょう)」の代表的な方法です。
シリコンやプラスチックで作られたリング状の器具(ペッサリー)を膣の中に挿入し、下がってきた子宮を下から物理的にグッと押し上げて支えます。
どんな治療?(使い方と手順)
ペッサリーには様々なサイズや形(リング型、ドーナツ型など)があり、医師が患者さんの膣の大きさや子宮の下がり具合に合わせて、ぴったり合うものを選びます。
- 挿入の手順: 外来の診察台で、医師が器具を小さく折りたたむようにして膣内に入れます。中でパッと広がり、骨盤の骨の隙間に引っかかることで、子宮を本来の位置に近い場所でキープします。
- 処置の時間: 挿入自体は数分程度で終わり、強い痛みはほとんどありません。位置がぴったり合えば、入れている最中の違和感や異物感もなく、普段通りに歩いたり生活したりできます。
ペッサリー療法のメリット
- 体にメスを入れない(手術が不要): 麻酔や入院の必要がなく、高齢の方や持病(心臓病や糖尿病など)があって手術のリスクが高い方でも、安全に治療を受けられます。
- その場で即座に症状が改善する: 挿入したその日から、股の間の不快な異物感や、引っ張られるような下腹部痛、排尿のしづらさといった症状がすっきりと解消します。
- 妊娠を希望する方でも使える: 将来的に出産を考えているため、子宮を残したい・手術をしたくないという若い世代の方でも選択できる治療法です。
⚠️ 知っておくべき注意点とデメリット
ペッサリーは非常に便利な器具ですが、「一度入れたら終わり」ではなく、継続的なケアが必要です。
- 定期的な通院(メンテナンス)が必要: 膣の中に異物を入れ続けることになるため、分泌物(おりもの)が増えたり、膣の壁が擦れて傷ついたり、感染を起こしたりすることがあります。そのため、通常は3ヶ月〜半年に1回程度、定期的に通院して器具を外し、膣内の洗浄や器具の交換を行う必要があります。
- 根本的な治癒(完治)ではない: あくまで下から支えているだけなので、ペッサリーを外せば子宮はまた下がってきます。
- 脱落(外れてしまう)することがある: 骨盤底筋の緩みが非常に強い方(ステージ3〜4など)や、激しい運動・強いいきみによって、ペッサリーが膣の外にポロッと落ちてしまうことがあります。その場合は、サイズを変更するか、他の治療法(手術など)を検討します。
- 性交渉への影響: 基本的には入れたままでの性交渉は難しいため、その場合は医師に相談して着脱の指導を受けるか、別の方法を検討する必要があります。
近年増えている「自己着脱(セルフケア)」という選択肢
従来は病院で数ヶ月に一度交換してもらうのが主流でしたが、最近では「日中は自分で入れて、お風呂や就寝前には自分で外して洗う」という自己着脱(セルフケア)を取り入れるクリニックも増えています。
夜間は膣を休ませることができるため、おりものが増えたり、膣壁がただれたりするトラブルを大幅に減らすことができるのが大きなメリットです(手の器用さや慣れが必要なため、医師の指導のもとで行います)。
まとめ
子宮脱は「恥ずかしくて誰にも相談できない」と、一人で何年も抱え込んでしまう方がとても多い病気です。しかし、実は多くの女性が経験するごく一般的な疾患であり、早期に対策を始めれば、手術をせずに快適に過ごせる選択肢がたくさんあります。
「もしかして?」と思う違和感があれば、どうぞお気軽に当院の婦人科までご相談くださいね。みなさんの健やかで快適な毎日をサポートいたします。
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岩佐弘一 プロフィール
ホルモン研究とガイドライン執筆の経験を、あなたの健康へ
大学時代より、女性の健康の要である「女性ホルモン」の研究に深く携わってまいりました。 その専門性を活かし、日本産婦人科学会の「低用量ピルガイドライン」や更年期女性に関する数多くの論文の執筆活動など、正しい医療情報の普及にも力を入れています。
