- 2026年7月13日
教えて!岩佐院長~更年期を支える「ホルモン補充療法(HRT)」の基本と効果~

こんにちは。枚方市香里園町にあるイワサクリニック院長の岩佐です。
当院のブログをご覧いただきありがとうございます。
「最近、急に体がほてって汗が止まらない…」
「理由もなくイライラしたり、落ち込んだり、ぐっすり眠れなくなったりした…」
閉経の前後(40代後半〜50代前半頃)に訪れるこのような心身の不調に、一人で悩んでいませんか?
「年のせいだから」「我慢が足りないから」と根性論で片付けてしまいがちですが、実はこれ、脳内が「ガス欠」や「パニック」を起こしている極めて生物学的な現象です。
今回は、この更年期の不調の根本原因に直接アプローチできる治療法「ホルモン補充療法(HRT:Hormone Replacement Therapy)」について、Q&A形式で分かりやすく解説します。
Q1. なぜ更年期に不調が起きるの?ホルモンを補う必要があるのはなぜですか?
A. 閉経前後に女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減ることで、脳のコントロール機能がパニックを起こしてしまうからです。
閉経前後の約10年間(更年期)は、卵巣の働きが弱まり、エストロゲンが急激に減少します。この急激な「波」が心身に大きなインパクトを与えます。
- ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)の原因:体温調節の司令塔である脳の「視床下部」が、ホルモンの減少によってパニックを起こし、血管が「暑い」と勘違いしてしまうためです。
- イライラ・抑うつ・不眠の原因:エストロゲンには脳内の「幸せ物質(セロトニンなど)」を守る働きがあります。これが減ることで脳内がガス欠状態になり、メンタルや睡眠に影響が出やすくなります。
ホルモン補充療法は、減ってしまったホルモンをお薬で補うことで脳のパニックを鎮め、心身を安定させる「原因療法」です。
Q2. 具体的にどんな方法で治療するのですか?
A. 患者様の体の状態(子宮の有無など)に合わせて、最適なホルモンの組み合わせやお薬のタイプ(飲み薬・貼り薬・塗り薬)を選びます。
補うホルモンの種類
- 子宮がある方:エストロゲンと一緒に、子宮内膜を守るための「黄体ホルモン(プロゲスチン)」を併用します。
- 子宮を摘出された方:エストロゲンのみを補います。
お薬のタイプ
- 飲み薬(経口剤):以前からの一般的なタイプです。
- 貼り薬・塗り薬(経皮剤):最近の主流です。皮膚から直接吸収されるため、肝臓への負担が少なく、血栓症(血の塊ができる病気)のリスクを低く抑えられるメリットがあります。
Q3. ホルモン補充療法を始めると、どんなメリットがありますか?
A. 今ある辛い症状を治すだけでなく、将来の健康を守る「予防医学」として4つの大きなメリットがあります。
- 更年期症状の改善:ホットフラッシュが劇的に良くなり、それに伴う夜中の目覚め(不眠)も改善します。
- 骨を守る(骨粗鬆症の予防):閉経後に急激に減ってしまう骨密度を食い止める、強力な守り神になります。
- 血管を守る(心臓病の予防):動脈硬化を抑え、心筋梗塞などの心臓病のリスクを下げる効果が期待できます。
- 脳を守る(認知症の予防):適切な時期に始めることで、アルツハイマー型認知症の発症リスクを下げる可能性が示されています。
Q4. ホルモン療法は「癌(がん)が怖い」というイメージがありますが、安全性は?
A. 開始する時期がとても重要です。閉経後10年以内、または60歳未満の「黄金の10年」に始めれば、非常に効果的で安全とされています。
この適切な治療開始時期は医療の世界で「黄金の10年」と呼ばれています。
高齢になってから初めて導入すると、逆に血管や脳へのリスクが高まることがあるため、早めの相談が大切です。
気になる乳癌のリスクについては、黄体ホルモンを併用する場合にわずかなリスク上昇が報告されていますが、医師による適切な管理のもとであれば、過度に恐れる必要はありません。
Q5. 検査数値が正常だったら、治療は受けられませんか?
A. いいえ、そんなことはありません。当院では「共同意思決定(SDM)」を大切にしています。
血液検査などの数値が正常範囲内であっても、ご本人が辛さを感じていれば治療の対象になります。
治療法は医師が一方的に決めるものではありません。「これを飲みなさい」と押し付けるのではなく、医師としっかり対話しながら、「ご自身の生活の質(QOL)を最大化するメニュー」を共に選んでいきましょう。
⚠️ ご注意(ホルモン補充療法を受けられない方)
重い肝臓病がある方、乳癌や子宮内膜癌の既往がある方、血栓症の経験がある方などは、残念ながらホルモン補充療法を受けることができません。
その場合は、漢方薬や生活指導など別の選択肢をご提案し、全力でサポートいたします。
まずはご自身の状態をチェックしてみませんか?
更年期の付き合い方に正解はありません。
まずは自分の今の状態を「簡易更年期指数(SMI)」などで客観的にチェックしてみることから始めてみませんか?
少しでも「辛いな」「これって更年期かな?」と感じたら、どうぞ一人で抱え込まずに、お気軽に当院の専門医にご相談くださいね。あなたの毎日の笑顔と、将来の健康を一緒に守っていきましょう。
簡易更年期指数(SMI)セルフチェック
1 顔がほてる
強:10 中:6 弱:3 なし:0
2 汗をかきやすい
強:10 中:6 弱:3 なし:0
3 腰や手足が冷えやすい
強:14 中:9 弱:5 なし:0
4 息切れ、動悸がする
強:12 中:8 弱:4 なし:0
5 寝つきが悪い、または眠りが浅い
強:14 中:9 弱:5 なし:0
6 怒りやすく、すぐイライラする
強:12 中:8 弱:4 なし:0
7 くよくよしたり、憂うつになることがある
強: 7 中:5 弱:3 なし:0
8 頭痛、めまい、吐き気がよくある
強: 7 中:5 弱:3 なし:0
9 疲れやすい
強: 7 中:4 弱:2 なし:0
10肩こり、腰痛、手足の痛みがある
強: 7 中:5 弱:3 なし:0
合計点数:______点
チェック結果(あなたの点数は?)
合計点数から、現在の状態と対処法の目安を確認してみましょう。
- 0〜25点:問題ありません 今のところ更年期の症状は落ち着いています。これまで通りの無理のない生活を続けましょう。
- 26〜50点:生活習慣を見直しましょう 食事のバランスや適度な運動に気をつけ、無理をしないように過ごしましょう。
- 51〜65点:クリニックの受診をおすすめします 更年期障害の治療対象となるレベルです。生活指導やカウンセリング、ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬などのサポートを受けることで毎日の生活が楽になります。一度ご相談ください。
- 66〜80点:長期間の計画的な治療が必要です 症状が重く、日常生活に支障が出ている状態です。早めに受診し、ご自身に合った治療を計画的に進めていきましょう。
- 81〜100点:各科の精密検査が必要です 更年期障害だけでなく、別の病気が隠れている可能性もあります。まずは専門医を受診し、しっかりと検査・対応を行う必要があります。
51点以上だった方へ:一人で悩まずご相談ください
「年のせいだから仕方ない」「我慢すればいつか治る」と無理をしていませんか? 当院では、患者様お一人おひとりの辛さに寄り添い、ライフスタイルに合わせた治療法をご提案しております。
▼ ご予約・お問い合わせはこちら
- WEB予約(24時間受付):イワサクリニック |枚方市 Web予約受付
少しでも「辛いな」と感じたら、お気軽に当院へお越しください。
岩佐弘一 プロフィール
ホルモン研究とガイドライン執筆の経験を、あなたの健康へ
大学時代より、女性の健康の要である「女性ホルモン」の研究に深く携わってまいりました。 その専門性を活かし、日本産婦人科学会の「低用量ピルガイドライン」や更年期女性に関する数多くの論文の執筆活動など、正しい医療情報の普及にも力を入れています。
